ユニクロ社長・柳井正が「アメリカの大学生協」で閃いた創業理念

全世界に2252店舗を展開し、日本を代表する企業になったユニクロは1984年に一号店がオープンしました。ユニクロには、この一号店から続いているモットーがあります。それが「ヘルプ・ユアセルフ」です。

ヘルプ・ユアセルフは和訳すると「ご自由にどうぞ」です。ユニクロはお客から求められない限り接客をしません。今でこそ珍しくありませんが、ユニクロが生まれた80年代のアパレルは接客販売が当たり前の時代でした。

柳井社長が「ヘルプ・ユアセルフ」のユニクロを始めたきっかけは、アメリカで見かけた大学生協です。ユニクロを始める前の柳井社長は、アメリカへTシャツヤジーンズを買い付けに行ったり、『ギャップ』や『リミテッド』など成功していたアパレルチェーンの視察旅行に行ったりしていました。大学生協に立ち寄ったのは、この時です。

その時のことを、柳井社長は著書『一勝九敗』で次のように記しています。「学生がすぐにでも欲しいものを手に入れられるような品揃え、それでいて接客が要らない。セルフサービスだ。売らんかなという商業的な匂いがしないし、買う側の立場で店作りされている。本屋やレコード店と同じようにすーっと入れて、欲しいものが見つからないときは気楽に出ていける。こんな形でカジュアルウェアの販売をやったらおもしろいのではないかと思った」

この「セルフサービスのカジュアルウェア店をやる」という信念が形になったのがユニクロです。『一勝九敗』には、セルフサービスだと感じが悪いので、「ヘルプ・ユアセルフ」と言い換えたというくだりもあります。

「頑張ればうまくいく」という根性論でもなければ、「こうすればうまくいく」という方法論でもない、人間関係に根ざした「だから自分はこれをやるんだ」という信念論が人間には必要です。この信念論のパターンを覚えれば覚えるほど、自分の信念も自覚できるようになります。

アパレル業界に身を置く柳井社長にとって、大学生協や本屋やレコード店は「他業種」です。他業種の常識を、自分の業界に持ち込んで成功を収める実業家は珍しくありません。柳井社長の場合は、それが「セルフサービス」だったのです。

近年、ユニクロはRFIDという最新技術を使ったセルフレジを導入しました。このセルフレジにも、柳井社長の「セルフサービス」の信念が息づいています。

最新技術はただ導入するだけではうまくいくとは限りません。セブンイレブンは決済サービス「7pay」を導入しようとして失敗しました。セブンイレブンほどの大企業であれば資金的にも余裕があり、最新技術も簡単に導入できると想像しがちです。しかし、実際はそこまで単純ではありません。

技術は信念があるからこそ使いこなせます。そして、その信念とは、企業の場合なら創業理念になります。ユニクロのセルフレジは商品を入れた買い物カゴを台に乗せるだけで、一瞬で会計が終わります。この便利さには、柳井社長が30年前に考えた「セルフサービス」「買う側の立場で店作りされている」という信念が垣間見えます。

信念や理念は言葉でできていて、形がありません。だからこそ、それはいつの時代にも新しい形を持つことができます。信念と最新技術の掛け算が商品やサービスを生み出すことを、柳井社長とユニクロの成功は物語っています。

柳井社長に限らず、他業種に影響を受けて、自分の業界で革新的なビジネスを始めた実業家はたくさんいます。ビジネス書やドキュメンタリーに触れた際は、その人が誰にどんな影響を受けて、何を思いついたのかを確かめてみてください。信念の仕組みがよりわかるようになり、自分の信念に気づくやすくなるはずです。

信念論とは?

人間関係に根ざした「だから自分はこれをやるんだ」という信念論が、行動力の正体です。信念論を知ることで、悩みや困難を乗り越えられるようになります。詳しくは下記リンクをご覧ください。