農学博士・瀬戸昌宣「子育て経験」がきっかけだった教育者転身

NPO法人SOMAは、不登校の小中学生を対象にした教育プログラム「i.Dare(イデア)」を提供しています。i.Dareは3週間のオンラインワークと1週間の合宿で構成されており、オンラインワークで合宿の計画を立てて、1週間の合宿で共同生活とフィールドワークを行います。

i.Dareには、「子供たちが主体となって考えて、選択する」という特徴があります。2020年のプログラムでは、コロナ禍で合宿を行うかどうかの判断を、子供たちとの話し合いによって決めたそうです。こうした試みが評価され、i.Dareは経済産業省の実証事業「未来の教室」に2年連続で採択されました。

このNPO法人SOMAを設立したのが、農学博士の瀬戸昌宣です。瀬戸はもともとニューヨークのコーネル大学に留学し、農業昆虫学の博士号を取得した研究員でした。そんな瀬戸が教育を始めるきっかけになったのは、博士号取得と同じ年に生まれた自分の長男です。

雑誌『フォーブズ』の記事で、瀬戸は子育てを通して次のように考えたと言います。「親として、自分は子供に何ができるんだろう」「そこで気づいたのは、それはこの子に何かを教えることではないということ。彼が彼のままでいられる環境をつくって、整えることだけが、ぼくにできることだと思ったんです」。この「ひとが育つ環境をととのえる」という信念が、NPO法人SOMAや教育プログラムi.Dareという形になっています。

「頑張ればうまくいく」という根性論でもなければ、「こうすればうまくいく」という方法論でもない、人間関係に根ざした「だから自分はこれをやるんだ」という信念論が人間には必要です。この信念論のパターンを覚えれば覚えるほど、自分の信念も自覚できるようになります。

人生は「出会い」「別れ」「関係の変化」の3パターンでしか変わりません。瀬戸にとっては自分の長男が生まれたことが、これまでのキャリアを手放して転職するほどの出会いになりました。親子の関係に生まれる感情と信念はそれほどまでに圧倒的です。

とはいえ、それまでのキャリアや研究が無意味だったかというと、そうではありません。瀬戸昌宣は同じ記事で次のようにも答えています。「人を含めたすべての生き物には、自ら育つ力が備わっている」「大人がすべきは、子どもたちがもつ育つ力を引き出すための『土づくり』にほかならない」

この考えは前職だった「農業昆虫学の研究」が下地になっています。「人生に無駄はない」という教訓が多くの人間によって語られるのは、経験したすべてが何らかの結果を実らせる肥やしになるからです。

ただ、どんなにいろいろな知識や技術を蓄積しても、それだけでは肥やしにはなりません。それが肥やしになるのは、「自分はここでやっていく」と専門分野を決心した時だからです。そして、その決心の根拠になるのは、人間関係に根ざした「だから自分はこれをやるんだ」という信念論です。瀬戸の場合は、その相手になったのが自分の長男でした。

瀬戸の体験談に限らず、誰かに影響を受けて転職することは珍しくありません。ぜひビジネス書の著者の体験談や、ビジネス誌のインタビューから探してみてください。人間が信念を持つ仕組みがわかるはずです。

信念論とは?

人間関係に根ざした「だから自分はこれをやるんだ」という信念論が、行動力の正体です。信念論を知ることで、悩みや困難を乗り越えられるようになります。詳しくは下記リンクをご覧ください。