女子レスリング金メダリストに学ぶ「落ち込んだ時に立ち直る方法」

試合開始24秒で敗退して引きこもりに

今週の女性セブン(2020年42号)にロンドン五輪レスリング女子48kg級で金メダルを獲得した、小原日登美のインタビューが掲載されています。

彼女のレスリング人生は順風満帆ではありませんでした。女子レスリングが五輪正式種目に採用された時、彼女がそれまでエントリーしていた48kg級が存在せず、51kg級にエントリーすることになりました。しかし、この51kg級には個人戦206連勝を記録した吉田沙保里選手がいました。

小原選手は全日本選手権で、吉田選手に開始24秒で敗退。このことがショックで実家に戻って引きこもり、体重が74kgまで体重が増加しました。この時は、トレーニングを再開して体重を戻すのに2年かかったと言います。

また、2010年のアジア大会で優勝を逃した時は、レスリング関係者に「アジア大会でよかったよ。五輪だったら取り返しのつかないことになってたね」と言われたことがトラウマになり、五輪が近づくに連れて逃げ出したくなったと言います。こうした彼女の体験談はオリンピックで金メダルを取るような強者でも、メンタルに波があることを示しています。

彼女はなぜそのメンタルの波を乗り越えて、結果を残すことができたのか。何かを成し遂げたり、習慣や性格を変えたりするには信念が必要です。そして、信念は「テーマ」「エピソード」「フレーズ」の3つで出来ています。

<信念の3要素>
1.テーマ(取り組むべき課題)
2.エピソード(心を揺さぶられた体験)
3.フレーズ(体験について考えたこと)

立ち直れるのが「強い心」

彼女の場合、「再起」がテーマになっています。そして、このテーマについて、父親から「人はどこからでもやり直せるから」とよく言われていたことを振り返り、「私の人生はまさにその通りだった」と話しています。このように「まさにその通りだ」と深く納得することで、誰かの受け売りの言葉が、自分の信念になることは珍しくありません。

「再起」は人間にとって重要なテーマです。すべてが順風満帆な人生などありえません。誰もが逆境に立たされ、進むか引くかの選択を迫られる瞬間があります。「頑張れば夢は叶う」とか「努力すれば実現できる」というのは、底の浅い人生観です。

スポーツも「練習して強くなれば勝つ」というほど単純ではありません。いくら練習しても超えられない壁や、逆立ちしても勝てないと思うような相手に出くわします。彼女のように世界大会に挑むレベルになれば、周囲のサポートやそれに伴う期待も尋常ではありません。大きな結果を出すには、そうした状況で「それでもなお」と立ち直ることが求められます。

この再起できるメンタルこそ「強い心」です。そして、強い心は人間関係によって育まれます。ダイヤモンドの原石を磨くのは同じダイヤモンドであるように、人間を磨くのは人間なのです。そして、その強い心の象徴になるのが信念です。

すがるような気持ちで客席を見る

信念を持つには、自分が決めたテーマについて日頃から情報を集める必要があります。また、ただ信念を持つだけでなく、それを誰かに話して、自覚を高めることも大切です。信念の3要素に、このヒントとアウトプットを加えた5ステップを私は「マインドレコーディング」と読んでいます。

〈マインドレコーディングの5ステップ〉
1.テーマを決める
2.ヒントを集める
3.エピソードを振り返る
4.フレーズを作る
5.アウトプットで確かめる

小原選手はロンドン五輪決勝で1ラウンド目で1ポイントを先取された際、「このままじゃ負ける」と焦ったそうです。この時、彼女はすがるような気持ちで客席を見たところ、自分が所属する自衛隊のコーチたちが必死に応援してくれていて、「ダメだ、弱気の自分がでた」と我に返ることができたと言います。

この「すがるような気持ちで客席を見る」ことが、ヒントを集める行動になっています。こうした行動をとっさに取れるのが、彼女が自分の心を育んできたことを表しています。「どうしよう」と悩み込んでしまった結果、周りのことが何も入ってこなくなるのが、まさに弱い心だからです。

「強い心」というと何があっても落ち込まない鉄のようなイメージがあるかもしれません。しかし、落ち込む事がある度に立ち直れる柔軟性こそが、本当の強い心なのです。小原選手の体験談はそのことを物語っています。

マインドレコーディングとは?

「頑張ればうまくいく」という根性論でもなければ、「こうすればうまくいく」という方法論でもない、物事を成し遂げるための信念を持つ手法。それがマインドレコーディングです。
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