福山雅治が新アルバム『AKIRA』に込めた意味。父親の死がもたらした死生観とは?

「僕が生きてる今日という日は父が生きたかった明日」

福山雅治が6年8ヶ月ぶりのニューアルバムを発表しました。アルバムのタイトルは亡父の名前を由来にした『AKIRA』です。そのタイトルが示す通り、亡き父と向き合った『死生観』がアルバムのテーマになっています。

その心境が『週刊朝日』のインタビューや、『APPLE MUSIC』の紹介で語られています。彼は17歳の時に、父親を癌で亡くしました。曲作りを始めたのは、その苦しみや悲しみから自分自身を救済するためでした。死生観を音楽で表現することは彼にとって、今になって始まったことではありません。

ただ、これまでは技術や経験が追いつかず、なかなか作品として描き切れずにいました。それが父親が亡くなった年齢に近づいたことで、「作品として表現しなければ」と考えるようになりました。その考えが形になったのが今回のアルバムです。

タイトル曲『AKIRA』には「僕が生きてる今日という日は父が生きたかった明日」という歌詞が、また『彼方』には「遥か遥か遥か彼方で逢えるのですね。あなたと生きていける彼方で」という歌詞がそれぞれ含まれています。どちらも生と死の間にある隔たりを繋ごうとする意志が込められています。

何かを成し遂げたり、習慣や性格を変えたりするには信念が必要です。そして、信念は「テーマ」「エピソード」「フレーズ」の3つで出来ています。

<信念の3要素>
1.テーマ(取り組むべき課題)
2.エピソード(心を揺さぶられた体験)
3.フレーズ(体験について考えたこと)

人間にとって最も重要な「継承」

福山雅治のテーマになっているのは『継承』です。彼は自分が父親と同じ年齢に近づいたことで、父親の人生と自分の人生を比較しています。それが表れているのが、「父の旅は僕の旅になり、僕の旅は君の旅へ、血の轍を走ってゆく」という歌詞です。

彼は「血」という言葉で継承を表現しています。その「血」について、「なすべきことをわかっている。それはこの血が知っている」というフレーズを歌っています。この「なすべきこと」は明日の仕事のスケジュールといった実用的なものではなく、自分の人生における使命や役割を意味しています。

そこに万人に共通する正解はありません。だからこそ、その答えは「ただ自分はそうだと信じている」という信念になります。このように自分の体験について振り返り、自分なりに考えたことが、自分の信念になるのです。

「継承」は人生において最も重要なテーマです。人間はいつか必ず死にます。そして生者と死者は話すことができません。その断絶を埋めるために死にゆく者は想いを託し、残れされた者は思いを受け継ごうとします。それが継承です。

しかし継承は必ずしも完全に行われるわけではありません。親しい人物の死は大きな悲しみが伴います。福山雅治の父親のように事故や病気で若くして亡くなったのであれば、その悲しみは一層強くなります。

その大きな悲しみゆえに、受け継ぐはずだった思いを心の奥に封じ込めて、忘却することがあります。その影響はとても大きく、人生全体に暗い影を落としかねません。彼の場合も30年以上続く根源的なテーマになっています。

創作はマインドレコーディングの結果そのもの

信念を持つには、自分が決めたテーマについて日頃から情報を集める必要があります。また、ただ信念を持つだけでなく、それを誰かに話して、自覚を高めることも大切です。信念の3要素に、このヒントとアウトプットを加えた5ステップを私は「マインドレコーディング」と読んでいます。

〈マインドレコーディングの5ステップ〉
1.テーマを決める
2.ヒントを集める
3.エピソードを振り返る
4.フレーズを作る
5.アウトプットで確かめる

福山雅治は「自分の年齢」を「父親の亡くなった年齢」に絡めて考えています。また、「自分と子供の関係」を「亡くなった父親と自分の関係」に絡めています。このように自分のテーマについて、ヒントを日々集めているからこそ、たくさんのフレーズが生まれて、それが歌になり、一枚のアルバムになっています。創作はマインドレコーディングの結果そのものです。

音楽にしろ小説にしろ、一つの作品を作り上げるというのは大変な労力です。それが死の関わるものであればなおさらです。『AKIRA』というアルバムは彼がその努力をやり遂げたこと示しています。人間の最も本質的な部分に触れた貴重な体験だと思います。

マインドレコーディングとは?

「頑張ればうまくいく」という根性論でもなければ、「こうすればうまくいく」という方法論でもない、物事を成し遂げるための信念を持つ手法。それがマインドレコーディングです。
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