カインズ社長・土屋裕雅「ユニクロの模倣」で始めた商品開発

ホームセンターの『カインズ』は1989年に、スーパーマーケットの『ベイシア』から分社独立して生まれました。もともとは大型ディスカウントのホームセンターでしたが、2002年にグループ創業者の長男である土屋裕雅が社長に就任すると、商品開発、物流、販売を自社で行うSPA企業に転換します。

35万個販売の『珪藻土スプーン』をはじめとして、ご飯がつきにくいシャモジから発想を得た『ご飯がつきにくい茶碗』、世界三大デザイン賞の一つと言われる「iFデザインアワード」で受賞した『立つほうき』など、カインズのオリジナル商品は次々にヒット。2020年には売上高4040億円を記録し、業界首位になりました。

土屋社長が影響を受けたのは、ユニクロ創業者の柳井正社長です。柳井社長はもともと商品を買いつけて販売する一般的な小売店舗だった『メンズショップOS』を、『フリース』『エアリズム』『ヒートテック』といったオリジナル商品を開発・販売するSPA企業『ユニクロ』にしました。

雑誌『フォーブズ』の取材で、土屋社長は次のように話しています。「ちょうどアパレルのSPA企業が注目されていて、我々の世界でもトレンドが起こせるのではないかと思いました」。この「我々の世界でもトレンドを起こせる」という信念が形になったのが、カインズのオリジナル商品であり、業界首位という結果です。

「頑張ればうまくいく」という根性論でもなければ、「こうすればうまくいく」という方法論でもない、人間関係に根ざした「だから自分はこれをやるんだ」という信念論が人間には必要です。この信念論のパターンを覚えれば覚えるほど、自分の信念も自覚できるようになります。

土屋社長と柳井社長の関係は『異業種同士』です。異業種の成功者を見て、その成功法を自分の業界で模倣し、結果を出す事例はたくさんあります。どんな業界にも常識や体質があります。その常識や体質に、異業種のやり方で風穴を空けることが、抜きん出た結果をもたらすのです。

たとえば、グーグルを創業したラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、政治家の選挙投票を模倣して、「被リンクが多いページが価値のあるページ」と考えました。この「ページランク」という発想によって、ウェブページは広告媒体として認識されるようになり、グーグルは『アドワーズ』という広告出稿サービスを展開することで、大きな利益を上げるようになりました。現在では、世界全体の検索エンジンシェアの8割以上を、グーグルが占めています。

単に「異業種を模倣した」というだけでなく、土屋社長と柳井社長は出自も似ています。カインズの土屋社長はベイシアグループ創業者の長男です。一方、柳井社長も父親の柳井等に『小郡商事』の洋服部門を任され、『メンズショップOS』を開店しました。

二人には「親に会社を任された」という共通点があります。だからこそ、興味関心を持って異業種の人物に注目し、その特徴を自社に活用できたのです。ニュースサイト『ITメディア』のインタビューでも、土屋社長は注目している会社としてユニクロを挙げています。人間の思考過程は、合理性や客観性だけでは語れません。

土屋社長は商品開発を軌道に乗せるために、社員ひとりひとりと対話を重ねたと言います。このことについて、「個別に話を聞くと、意外に面白いことを考えていたりするんですよ。でも、全員の前では出てこない」と振り返っています。こうした人間的な部分を社長が見ているからこそ、カインズは結果を出しています。ビジネスに関心がある人間とって、とても勉強になる人物だと思います。

信念論とは?

人間関係に根ざした「だから自分はこれをやるんだ」という信念論が、行動力の正体です。信念論を知ることで、悩みや困難を乗り越えられるようになります。詳しくは下記リンクをご覧ください。