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【もう遅い】なろう系作品で追放ものが増えたワケ。物語の基本構造と人間心理

最近のアニメ・漫画では、小説投稿サイト『小説家になろう』原作の作品が増えています。数年前に流行した『魔法科高校の劣等生』『RE:ゼロから始める異世界生活』『オーバーロード』『破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった」などをはじめとして、今期放映されている『無職転生』『転生したらスライムだった件2期』も、『小説家になろう』発の作品です。

そんな『小説になろう』でいま流行しているのが「追放もの」です。追放ものには、もともと冒険者パーティに所属していた主人公が、「お荷物」「役立たず」という烙印を押されてそのパーティから追放され、偶然知り合った美少女と新しいパーティを組んで大活躍する、というテンプレートがあります。

このテンプレートには続きがあります。主人公が抜けたパーティは、その後みるみる凋落。自分たちの功績が人知れず支えていた主人公のお陰だったと気づき、慌てて呼び戻そうとします。しかし、主人公はすでに信頼できる仲間たちに囲まれていて、元のパーティに戻る気は微塵もなく、「もう遅い」と勧誘を拒絶します。この「もう遅い」が作品タイトルに頻繁に含まれていたことから、「似たようなのばっかりだ」とネットで揶揄されました。

なろう系作品全般や追放ものに限らず、どんなジャンルでもテンプレートに沿ったような作品は必ず量産されます。ひと昔前に流行した「きらら系」では、女子4人組が軽音楽部や天文学部やゲーム制作やキャンプや釣りに熱中する作品が山ほど作られました。テレビの時代劇でも、将軍や副将軍が世を忍ぶ仮の姿で町人トラブルに関わり、悪代官や悪徳商人を成敗するという決まりきった流れの作品が毎週放送されていました。

新しいジャンルが開拓されて、そのジャンルが量産されるようになるのは、いつものことですが、そのジャンルとして「追放もの」が選ばれたことには、人間関係に根ざした信念論的な理由があります。そもそも「追放」は神話から続く定番のテンプレートです。

日本神話のスサノオは乱暴狼藉を働いた咎で天界を追放されました。スサノオとよく似た境遇で知られるギリシャ神話のヘラクレスも、自分の息子を殺した罪として自らを追放し、その後「エウリュステウスに12年間奉仕して、命ぜられる十の仕事を行え」という神託を受けて、12の試練を果たすことになります。

物語において「追放」がテーマになるのは、人間にとって最も大きな問題が「居場所」だからです。自分の居場所がなくなるほど、苦しみをもたらすことはありません。人はこの世のどこにも居場所がなくなると、あの世に行くしか無くなります。それが自殺です。

居場所の有無に比べれば、普段気にしている「勝敗」や「優劣」は二の次、三の次の問題です。物語は感情を揺さぶるのが目的なので、最も大きな大きな苦しみをもたらす「追放」が扱われやすい、という傾向があります。

ただ、なろう系作品の追放ものの場合、主人公の過ちや過失ではなく、周囲の嘲りが追放理由になっています。この「自分は悪くない。自分の実力を評価しない周りが悪い」という構造は、現実世界の生きづらさや息苦しさが反映されています。こうした物語を楽しむ人間を馬鹿にする風潮がありますが、現実に疲れた人間の気休めになることは、物語の大切な役割です。

また、「自分は悪くない。自分の実力を評価しない周りが悪い」という状況は、実際に起こりえます。評価の良し悪しは、価値観によって変わるからです。自分の言動が、ある人の価値観では肯定され、別の人の価値観では否定される。あらゆる言動には、このような賛否両論が伴います。

営業畑の言動が営業畑から肯定され、技術畑から否定される。あるいは技術畑の言動が技術畑から肯定され、営業畑から否定される。左翼の発言が左翼から肯定され、右翼から否定される。あるいは右翼の発言が右翼から肯定され、左翼から否定される。社会や組織には「誰から見ても正しい言動」は存在せず、議論と闘争と誹謗中傷に終わりはありません。

複数のコミュニティを渡り歩いても、その度にトラブルが生じるのであれば、自分に原因を探すべきかもしれません。しかし、今とは違う居場所を探すことは、当然の権利です。物語の場合はスケールが大きく描かれるので、それが「転生」などになりますが、現実の場合は「転職」や「転校」になります。

自分と似た価値観を持つコミュニティは所属することは、人生においてとても大切です。周囲によって追放されるのは大きな苦しみですが、自分から飛び出せば、その苦しみも多少はマシになります。物語はその時代の空気と必要性を反映しています。追放ものの流行は、「今の居場所にしがみつかない」という選択肢をサジェストしてくれています。

信念論とは?

人間関係に根ざした「だから自分はこれをやるんだ」という信念論が、行動力の正体です。信念論を知ることで、悩みや困難を乗り越えられるようになります。詳しくは下記リンクをご覧ください。